こんにちは、株式会社Key-Performanceの井畑です。
今回は市場の話です。
スタートアップを考える時に一番大切なのは「顧客の存在」であるという話を以前にしましたが、その顧客が集まって出来る「市場」がどんなタイプなのかを意識することで自分の顧客を発見しやすくなります。
市場とはなにか?
一応ちゃんと定義しておきます。
市場とは、特定の製品や製品群を取引する買い手と売り手の集まりである
「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」より
はい、つまりこういう事です。
市場とは、「特定の何かを欲しいと思っている人」と「その何かを提供出来る人」の集まり
スタートアップの4つの市場パターン
まず、スタートアップで狙う市場は大きく分けて「既存市場」と「新規市場」の2つに別れます。
そして「既存市場」へのアプローチは更に3つに別れます。
・今までの製品よりもよい製品を提供する
・今までの製品の機能を絞った「低価格版」を提供する
・今までの製品のある一部分を特化させた「特別仕様版」を提供する。(ニッチ化)
下の2つは既存市場を分割するので、「再セグメント化」と言われます。
まとめると、スタートアップの市場は以下の4つのパターンになります。
①既存の市場に「新製品」
②既存の市場を「低価格で再セグメント化」
③既存の市場を「ニッチで再セグメント化」
④新規市場の開拓
では、それぞれの市場の特徴を見ていきましょう。
①既存の市場に「新製品」パターン
「現在すでに存在している製品の性能を更に上げた製品を提供する」のがこのパターンです。
例えば、性能のいいパソコンを開発・提供するなどはこのパターンに入りますし、マッサージ店などをオープンする場合もこのパターンになります。
このパターンでのスタートアップでの一番の強みは、市場の情報も顧客の情報もすでに分かっているということです。なので顧客が必要とする機能を改善さえすれば、自然と売れていくということですね。逆をいうとその情報を持っているのは他者も同じなので、競争が激しくなります。
②既存の市場を「低価格で再セグメント化」
「最低限の機能だけでいいから低価格のものが欲しい」という需要があれば、「低価格での再セグメント化」市場が生まれる可能性があります。
例えばスマホなんかがそうですよね。とりあえずスマホは欲しいけど、高速通信も高い処理能力もきれいな画面もいらないって人向けに、月額1000円から使えるものなんかが提供されています。
もともと日本ではスマホはiPhoneの爆発的人気から始まり、性能の向上で各社が競い合っていたのですが、市場が大きくなるにつれてだんだん「最低限の機能」だけでいいから欲しいという顧客が出てきたので、そこを狙ったのですね。
このタイプで難しいのは、「いかにして収益を伸ばしていくか」ということです。低価格戦略なので、当然利益を出すのは難しいです。(「利益=売上-原価」なので、売上が小さいと利益も小さくなる)
逆を言えば、他者では絶対に真似できないような低価格を実現でき、かつそこで利益を得られる事が出来ればビジネスとして十分成り立ちます。
③既存の市場を「ニッチで再セグメント化」
ある特徴をものすごく特化させ、特定のニーズを満たす最適解となれば、そこに新たな市場が生まれます。
例えばアパレルサービスの「サカゼン」は「大きいサイズの服」というニッチ市場を狙っています。
ホームページでのキャッチコピーは
大きいサイズのメンズファッションが日本 最大級の品揃え!サイズは9L迄。
と、「大きいサイズの服」という市場を狙い撃っています。
それまで、「オシャレをするのは痩せている人だけ」とか「オシャレするなら痩せてから」という考え方が主流でしたが、その下に隠れた「太っていてもオシャレがしたい」というニーズに焦点を絞り、大成功をおさめています。
再セグメント化について
ここで、2つのセグメント化について説明しましたが、それはただ差別化するのとは異なります。
起業家教育の第一人者、スティーブン・ブランク氏は、自身の著書「アントレプレナーの教科書」でセグメント化についてこう述べています。
セグメンテーションとは顧客の心の中で自社が明快かつ明確な地位を得ることである。そして、その地位は唯一無二で理解しやすく、かつ最も重要なことは顧客が価値を感じ、欲し、今すぐ必要とする何かに関わっていなければならない
つまり、顧客にとって、「あのサービスだったらこの会社!!」と一瞬でイメージ出来るレベルの差別化でないとセグメント化は成功しているといえないのです。(例えば、太っている人がオシャレな服を買いたいと思った時に、真っ先に出てくるイメージが「サカゼン」にならなければいけないということです。)
④新規市場の開拓
そもそも新規市場の開拓とは………
・それまで世の中に存在しなかったものを生み出す
・コスト等の問題で今までサービスを手に入れられなかた顧客層にサービスを提供する
・調達、スキル、場所などの問題を、他の製品が解決出来なかった方法で解決する
この3つのうちどれかに当てはまります。
「解決するに値する問題」を抱えている人の存在が全く未知の状態、つまり市場も顧客も完全に未開拓な状態なので、成功へ至る壁は高いが、逆を言えばもし成功すれば周りに競合がいない状態でビジネスを行う事が出来る。
このタイプで重要なのは、今まで世の中に存在しなかったものを提供するので、顧客が自分たちの製品(サービス)を受け入れ、購入してくれるようになるまで粘り強く辛抱することである。
どのパターンでも最初は「顧客が存在するかどうか」
さあ、みなさんのビシネスはこの4つのどのパターンでしたか??
これらのスタートアップの市場パターンの違いを認識していないと、最初は上手くいったのにあとでつまずく可能性が出て来ます。
なぜなら、どのパターンでも一番最初は「顧客が存在するかどうか」の検証からはじめなければいけません。つまり、初期段階では市場のタイプを意識する必要がないんです。
でも、顧客の存在を確認してからの動きは大きく異なってくるため、パターンの認識を間違えていると突然上手く行かなくなります。(何社もの立ち上げを経験したベテラン起業家が失敗するのはたいていこの認識間違いです。)
なのでみなさんも自分のパターンをよく理解してスタートアップを進めてくださいね。
[…] 「あなたはどれ?スタートアップの4つの市場パターン」 […]