こんにちは、井畑です。
早速ですが質問です。次のうち、あなたはどちらなら15日待ちますか?
ほとんどの人がAは待てるけどBは待てないはずです。
値引額は同じ1500円なのにです。私たち人間は、与えられた選択肢を近場の別の選択肢と相対的に比較して判断をします。
人間は物事を相対的に判断するという点をうまく活用すれば顧客を自分の提供したいサービスにうまく誘導することが出来ます。
人間の感覚は相対的
上の2つの絵の中心の円は2つとも同じ大きさです。でも、左の円の方が大きく見えますよね?周囲にある円の大きさによって中央の円の大きさが変わって見えるこの効果を「エビングハウス錯視」と呼びます。
「視覚」を始め私たちの感覚は常に相対的に周囲を認識しています。これが感覚だけなら面白い小ネタで済んだのですが、物事を考えたり判断したりする時にも相対的な思考をしています。
感覚が相対的だという実例をもう一つ。お湯にカエルを放り込むとカエルは勢いよく暴れ出して逃げ出そうとします。ですが、常温の水の中にカエルを入れ、その水を火にかけると、温度がどんどん上がっていってもカエルは大人しく泳ぎ続け、水がお湯になった時には茹で上がっています。
お湯に放り込むと急激な刺激に反応してカエルは逃げ出そうとしますが、水から徐々に温度を上げると、カエルは気づかずそのまま茹で上げられてしまいます。この現象のことを「茹でガエル現状」といいます。
相対性を利用したマーケティング
エコノミストという経営雑誌があります。これは本屋で雑誌としても普通に買えるのですが、ちょっとお得になる定期購読のプランもあります。こんな具合です。
□WEB版エコノミストの購読 59USドル
□印刷版およびWEB版のセット 125USドル
みなさんだったらどれを選ぶでしょうか?同じ情報が手に入るならWEB版だけで良い?それともやはり現物も一緒に欲しい?
では、選択肢がこうなっていたらどうでしょうか?
□WEB版エコノミストの購読 59USドル
□印刷版の購読 125USドル
□印刷版およびWEB版のセット 125USドル
どうですか?3つ目のプランが圧倒的にお得に見えてきませんか?
マサチューセッツ工科大学のMBAの学生100人に次も、同じ選択肢を見せ、どのプランで契約するかを選ばせた結果がこちらです。
□WEB版エコノミストの購読 59USドル………16人
□印刷版の購読 125USドル………0人
□印刷版およびWEB版のセット 125USドル………84人
□WEB版エコノミストの購読 59USドル………68人
□印刷版のおよびWEB版のセット 125USドル………32人
どうですか?100人中52人の学生が本来であればWEBだけで満足という選択を、お取りに釣られてセット版を購読するという選択に変更しました。
どれか一つの選択肢が圧倒的にお得に感じるようにおとりとなる選択肢を見せられると、うまく誘導されてしまうんです。(ちなみにこの学生たちは世界的に見ても超優秀な人材たちです。)
本当に売りたいものを売るためのおとり
人間には他のものとの相対的な優劣に着目して、価値を決める習慣があります。習性といってもいいかもしれません。
大半の人は自分にとって何が必要かを正しく理解していないので、相対的な状況と比較してみた時にはじめてそのものの価値を感じます。
なので、ビジネスでは自分の売りたいサービスがあれば、おとりになるサービスを用意しましょう。
売りたいサービス「A」に対してのおとりになる選択肢は「Aと同じ属性」を持っていて、それでいて「同じ値段で性能がAより少しだけ劣る」か「Aと同じ性能でAより価格が高い」かのどちらかを用意するといいでしょう。どちらもAをお得に見せます。
ゴルディロックス効果
さらにおまけで、ゴルディロックス効果というものも紹介します。
これは超単純で「3つの選択肢があったら真ん中のものを選びやすい」というものです。
なので並べる順番は
- おとり
- 本命
- 別のサービス
とかがいいってことですね。
悪用は厳禁!!
はっきりいってこれをうまく活用すればゴミでも売れます。
ですが、短期的にみたら得をするかもしれませんが、お客様に明らかに損をさせるようなサービスを提供しても、後で悪い口コミが生まれるだけです。
なので、自分のためにもお客様のためにも、悪用はぜったにに厳禁です!!
まとめ
価値の判断は周囲の選択肢との相対的な評価で決まる
本命のサービスを売りたい時にはおとりの選択肢を用意すればいい
絶対に悪用しちゃだめ!!
A:定価2500円の万年筆が、15日後のセールでは1000円になる。
B:定価52500円のスーツが、15日後のセールでは51000円になる。