こんにちは、井畑です。
起業家はお客様に価値を提供するのが仕事です。だから、お客様がどんなものに価値を感じるかについては敏感にならないといけないです。
今回の記事は「人間の性質」についての話です。文明化された社会での価値提供を考える最初の準備運動として、人間の生き物としての刺激の求め方をご紹介します。
暇なくらいなら痛い方がいいのが人間
人間はとにかく「暇」を嫌う生き物です。暇を持て余すくらいなら自分から電気ショックをくらいにいくのが人間だという研究(R)があります。2014年のバージニア大学とハーバード大学の教導研究ですね。
何かするVS妄想する
大学生を対象に、研究室の中で6〜15分、自分を楽しませる妄想を被験者にさせ、楽しかったかどうかを聞いたところ、49.3%の人が「楽しくなかった」と答えたそうです。(やらなくてもわかりそうだけど…)
今度は、「研究室で緊張してたから楽しめなかったんだろ!自分の部屋ならきっとだいじょうぶ!」と、自宅で同じ実験をしてみました。
結果、32%の人は妄想を止めてなにか別のことを始めてしまったそうです。さらに、「楽しかった」と答えた人は研究室でやった時よりも少なくなり、参加者自身も、研究室よりも自宅にほうが妄想にふけることがより難しいと答えています。
ちなみに、妄想を楽しむことを難しく感じるのは大学生だけでなく、18歳〜77歳の被験者を選んでも結果は同じでした。(年齢の中央値=48.0歳)
この結果から
妄想<なにかする
という結果が見えてきました。みんな暇は嫌なんです。
妄想するVS電気ショック
今度はより非人道的な実験です。
まず被験者に「魅力的な写真」を見せた「正の刺激」(性の刺激だったような気もしますが…)と、「電気ショック」による「負の刺激」を体感して、快適さを評価してもらいます。(エロ写真と電気ショックって、この時点でかなりヤバいですよね…)
その後、先程の実験のように、妄想に浸ってもらいますが、被験者は自分の意志で電気ショックを受けることができます。(ボタンを押すと電気が流れる…といったところでしょうか?)
結果、男性で67%、女性で25%の人が、少なくとも一回、自分で希望して電気ショックを受けました。(なにか別の刺激に目覚めてしまった人もいるような気が……)
つまり、暇なくらいなら不快でもいいからなにか刺激が欲しいというデータですね。
電気ショック>暇
なんです。
同じ刺激なら予測不可能の方が脳は喜ぶ
今度は、同じ刺激ならワンパターンがいいのか?それとも変化があった方がいいのか?って研究結果(R)です。エモリー大学とベイラー医科大学の研究ですね。
実験の手順
25人の正常な成人に対して、少量の「水」と「ジュース」を口に入れた時の脳の動きをfMRIスキャンで測定しました。
- 人間は水とジュースのどっちも好きだから。好きなものと嫌いなものを実験に使うと、その好き嫌いの影響が色濃く出そうだから、好きなものと好きなもので実験しているんですね。
- どちらも、人間以外の霊長類を行動課題で訓練する際の強化刺激として日常的に使用されている。
水とジュースは10秒毎にチューブから0.8mlずつ投与されましたが、ここで重要な比較として、
- 水とジュースが規則的な順番で出ていくパターン(例)水→ジュース→水→ジュース→水→ジュース………
- 水とジュースが全くのランダムで出ていくパターン(例)水→水→ジュース→水→ジュース→ジュース→ジュース……
の2パターンを比べました。これによって自分にとって望ましい刺激の場合、予測可能な場合と予測不可能な場合で、脳が感じる刺激に差があるのか?を測定することが出来ます。
実験結果と考察
被験者25人中、18人(72%)がジュースのほうがより好きと答えています。つまり水かジュースかで好きの度合いが違うのですが、その好き嫌いの差は脳の反応としてはとてもわずかでした。さらに、側坐核、海馬、内側前頭前野などの、ドーパミンを分泌する報酬領域と呼ばれる部位はほとんど反応がありません。
しかし、実験パターン②の、水とジュースのどちらが出てくるかがランダム(予測不可能)な場合、実験パターン①に比べて、側坐核を含む内側眼窩前頭皮質の広い範囲で、視床の左中背側核と右小脳の両方、頭頂皮質の広い領域が含まれていました。つまり、報酬領域が活性化しているということです。つまりドーパミンがたくさん分泌され、快感・興奮が得られたということです。
予測可能なパターン①の実験では、次の動きの予測ができるため脳が学習し、反応が回数を繰り替えすごとに報酬領域の興奮も減少します。しかし、予測不可能な刺激の場合、脳が学習を行えないため、報酬領域の興奮が減少することがなく、最終的に大きな差になったようです。
予測不可能な刺激のほうが、脳は興奮して快感を覚えるんですね。
まとめ
ソシャゲなんかはこの2つの特徴をすごくよく捉えているんですね。
- スマホで出来るのでスキマ時間に入り込める(ユーザーの「暇を潰したい」という欲求を満たす)
- ガチャやドロップ等のランダムな要素を盛り込む事によって、ユーザーの脳内ではドーパミンが出続ける
お客様へ提供するサービスにも、スキマ時間に入り込めて、予測不可能な変化をつけたほうが魅力が高まるってことですね。