こんにちは、井畑です。
今回も脳の自動処理プロセスについての話です。前回同様、人間の脳がどれだけ自分にとって都合のいいように世界を見ているかをご紹介します。
今回は【身勝手な評価編】でお送りしますm(_ _)m
- アポフィニア
- 正常正バイアス
- 感情ヒューリスティック
アポフィニア
物事の因果関係を考える際、「何か意味があってこの結果が起こった」と思い込んでいると「偶然」の可能性を頭から排除してしまう。
あまりにも出来すぎた偶然に対し、勝手に意味や因果関係を見出してしまうことを「アポフィニア」と言います。一つ具体例を挙げましょう。
偶然隣に座った異性が全く同じスマホを使っていて、話して見ると誕生日も同じで、お母さんの年齢も同じで、おまけにふたりとも犬を飼っていた。なのでこれは運命の出会いだと思う。
この例では「偶然隣に座った異性とあまりにも共通点が多い」ので、「運命」なる力が働いたと感じてしまうというものですね。
実際にこの二人が出会ったのは全くの偶然で、因果関係はないことはおわかりですよね?(もっと科学が進んで目に見えない分野で因果関係が見つかるかもしれませんが、今の所はただの偶然です。)
このように、「単なる偶然」に対して何らかの影響や因果関係を見出してしまうことを「アポフィニア」といいます。
正常性バイアス
想定外の危機に直面すると、人は異常なほど冷静になり、何も危険はないというふりをする場合が多い。
非常事態に自己保存本能を忘れる事を「正常性バイアス」言います。レスキューの現場では「負のパニック」なんかとも呼ばれますね。
人間の脳は危機に瀕した時に、まずは自分の置かれている状況を分析し始めます。そして、普段自分が体験している事と、今目の前で起こっていることを比較分析します。そのせいで、今自分の体験している事が普段の生活の延長線上だと感じられてしまうようです。
要するに、「大丈夫、今は何も起こっていないから何も行動しなくていいんだ」という状態になってしまうんですね。災害の現場では「ぼ〜っとしてその場から動けなくなってしまう状態」として現れます。
正常性バイアスに対抗するためには
正常性バイアスに対抗するためには、危機が起こるより前に「その危機が起こったらどうしようか?」と考えている人です。事前に危機を認識することにより「普段の延長」という正常性バイアスから逃れることができます。
「もし○○が起こったら△△しよう」と予め決めておく事をIf-Thenプランニングと言います。予め出来事と行動を決めておく事で、脳はスムーズに動き出せます。
ダイエットのプランも「If-Thenプランニング」をもとに立てると達成率が2〜3倍に上がるそうです。
(例)もしお腹が減ったら(太りにくい)ナッツを食べよう。
(例)もしスキマ時間が出来たらスクワットをしよう。
感情ヒューリスティック
現実のデータや確率よりも、自分の感情によって物事の評価を決める。得になることは過大に評価される。そして、第一印象は特に評価に影響を与えやすい。
感情ヒューリスティックは脳の自動処理プロセスの中でも特に役立っているものの一つです。物事への評価をまずは「好き」か「嫌い」かで分け、「好き」に分類されたものは「もっと追求するか?しないか?」、「嫌い」に分類されたものは「それを遠ざけるか?遠ざけないか?」を判断します。
これは脳の構造的に合理的なんです。計算をする部分の脳(前頭葉や大脳新皮質)は比較的ゆっくり動きます。しかし、感情や本能を司る部分の脳(中脳)は高速で働きます。そのため、とっさの判断を手早くやるためには合理的に考えるよりも感情的に処理したほうが生存確率が上がったんですね。
しかし、論理的な思考が求められる場合や、数式や確率が与えられる場合にも感情ヒューリスティックで処理をしようとするのが人間の脳の不便なところ。感情を司る脳は論理的思考や数字の計算が苦手なので、好き嫌いで処理をしようとします。
感情ヒューリスティックへの対抗策
感情ヒューリスティックは私達が生きていく上で欠かせない機能なのですが、前述したとおりなんでもかんでも好き嫌いで処理されても困ります。
なので、「自分の最初の考えは基本的に感情によるもので合理的思考ではない」と肝に銘じて置くことが対策になります。
一旦感情で答えを出しても、一度立ち止まり考える時間を作れば、前頭葉や大脳新皮質で論理的な思考が出来るはずです。
「論理的な話は即答しない」が鍵になりますね。
まとめ
人間の脳は効率的に生きるためにいろんな処理を合理的に行っていますが、それが現代社会を生きる私達に100%都合が良いわけではありません。
なので、脳がどんな自動処理プロセスを持っているかを知り、上手に付き合って生きましょう。