起業家の才能を100%引き出す専門家、筧田 (@kakehida) です。
今回は、簡単に言うと、自分を成長させてくれる非公式の先輩という存在をどのように獲得するかという話です。 人生のいろんな場面において有効な話なのですが、特に起業シーンでは、自分の先を行く先輩が身近にいることがどれだけ自分の励みになるか……。
結論を先に言ってしまうと、
という流れとなります。
念のためですが、この記事は私の意見ではなく、科学的に根拠のある研究結果に基づいて発信するように心掛けております。 では早速、順に詳細を説明していきたいと思います。
そもそも非公式の先輩ってなに?
自分のことを身近で気にかけてくれる先輩的な存在のことです。 上司や誰かから紹介された先輩、あっちから勝手に先輩風を吹かせてきた人ではなく、自分でこの先輩のようになりたい、この先輩についていきたいと思えた人であることが望ましいです。 また契約というつながりではなく、お互いに面倒を見てもらう、面倒を見たくなるという関係というのもポイントです。 そういう意味で非公式です。
あなたの周りに、自分を気にかけてくれる、自分がついていきたい先輩起業家はいらっしゃいますか?
ちなみに非公式の先輩という言い方は、クリスティーナ・アンダーヒル氏による調査報告の中で登場する「非公式のメンター」を日本的に解釈したものです。
起業家に非公式の先輩って必要なの? そのメリットは?
仕事をやり抜く意欲は、能力よりも人間環境による
積極的に参加した授業、どんどん練習に励んだ部活、馬鹿騒ぎしたサークル、熱中した仕事……。 自ら率先して取り組んだ物事には、大抵、感情的な楽しみがあります。 積極的な気持ちにつながる楽しみが生まれる理由には、好きな先輩の存在だったり、先輩が自分のことを気にかけてくれるという状況があったります。
自分を引き上げてくれる
自分より上の水準のステージにいる先輩は、自分がまだ知らない物事・情報を教え、上のステージに引っ張りあげてくれます。 ただ前提として先輩から見て、「自分にとって大切な後輩」という関係性が必要です。 絆と言った方がわかりやすいでしょうか。 また先輩を成長の基礎とすることができれば、ただの模倣という道より、より先に進むことができます。
意欲を削がず、情熱を掻き立ててくれる
人は、尊敬する人と関わると俄然やる気になります。 その人が、あなたも同じことを達成できると感じさせてくれたなら、それは自分だけでは生み出せない成果もたらします。 もしあなたに、身近で自分のことを気にかけてくれる先輩がいたとして、達成可能性が高い目標を教えてくれたらどうでしょうか?
クリスティーナ・アンダーヒル [Christina Underhill] が職場の雇い主によるメンターシップ機能を過去20年を調査した。 職場のメンターシップも小さな改善をもたらしていたものの、実質的な成果は、人々が自分で見つけた非公式のメンターから生まれていました。 この成果は衝撃的なほど極端に分かれていました。
ジャーナリストのシェーン・スノウは次のように報告しています。
学生と指導者が自由意志で師弟関係を結び、個人的につながっていた場合、指導を受けていた人は、その後の収入・在職期間・昇進の数・仕事への満足度・職場ストレス・自己評価などの点で著しく良い成果を収めていた
非公式の先輩とつながるときの注意点
非公式の先輩 (メンター) とつながるのは一般的な人脈形成の流れとは異なります。 当然あなたはより水準の高い方を求めると思います。 という事はその人物は基本的に忙しいと思ってください。 他にも多くの人がその人の時間を求めているからです。 そこで先輩側の人は1日24時間という時間的制約の中で、当然、選り好みをします。 そこで実際に、自分にぴったりの先輩を得るにはどうすればいいでしょうか? 非公式の先輩を見つけ、出会い、身近な存在として自分のことを気にかけてもらうにはどうしたら良いでしょうか? その方法を見ていきましょう。
1. やれることをやってから先輩の目に留まる
怠けるために努力をしたくないために先輩を求めてはいけません。
実際のところ、専門家が何か助言をすると人々の脳の1部はシャットダウンしてしまうことがわかっています。
エモリー大学脳神経科学・精神医学のグレゴリー・バーンズ教授たちが2009年に行った研究によると、人は専門家として一目置かれる相手から助言されたり方向性を提示されると、自ら思考することをやめてしまうことが明らかになっています。 脳活動パターンに見られるこのような結果は、専門家への信頼感によって意思決定の転換が引き起こされることを示唆しているということです。
こうした脳の反応は、助言を求める相手が教師であれば問題がありません。 彼らはそのために報酬をもらっているので。 しかし、あなたの場合、何かに熟達した多忙な先輩起業家の時間を無料で求めることになります。 先輩が望んでいるのは、次の起業家を発動させるための情報を授けることであり、歩く教科書になることではありません。
「限られた時間の中で無償で力を貸したいと思える相手は誰でしょうか?」
自力でできる限りのことをやっている姿は、あなたの賢さと才覚、また決して人の時間を無駄にしないという人間性を示しています。 優れた指導者程、自分自身をそのような人間だと認識しています。 結果、先輩とあなたはとても大切な前提を共有したことになります。
2. 先輩について徹底的に調べる
先輩がその道で活躍している方なら、ネット上に情報が出ています。 時間を使って調べていましょう。 裏がない先輩なら、そう悪い気はしないはずです。 しかし先輩のことを調べる目的は喜ばせるためではありません。 これまで述べてきたようにその人物が自分の先輩として適切かを見極める必要があります。 先輩は自分の仕事の成績を左右する存在です。 1回限りのデートとはわけが違います。 先輩と顔を合わせた時、下調べをしておいた経験が必ず報われます。 自分のことを把握している人ということであれば、その時点で人並み以上に賢いと思ってくれるからです。
米国カリフォルニア大学の教育心理学者ロバート・ローゼンタール [Robert Rosenthal] と学校長のレノア・ジェイコブソンが行った実験では、無作為に選ばれた何人かの生徒について、教師たちに「潜在能力が高く、学力が急激に伸びる子」と伝えました。 学年末にその生徒たちに知能テストを受けさせたところ、IQの数値が平均で22上がっていたという結果が出ました。 教師たちは彼らに特に時間を割いたわけではなかった。 特別優秀な子を選んだわけではありませんが、彼らを特別だと信じる教師の期待により自己達成的な予言になったのです。
この結果について、ローゼンタールの考えでは、
教師たちは、この子たちを教えることにとりわけ興奮した。 そこで教師は、彼らに目をかけていると言う期待をそれとなく伝えていたのではないだろうか。 その結果、生徒自身が自分にはもっと理解力がある、もっといい成績が取れると信じるようになったと思われる。
3. 先輩の時間を浪費しない
人は、相手とのやり取りの最中、「嗚呼、自分の時間が無駄になってる」と感じたら、その相手を「迷惑な人」と認定します。 それは同時に、その人に基本的な能力が備わっていないと理解されます。 もし先輩に迷惑な人だと思われた場合、この人は私が助ける準備が整っていないと判断されるでしょう。 忙しい人に長文のメールを送るのは、あなたの真剣さの証明ではなく、常識がない迷惑な人だと証明するのみです。 先輩の貴重な時間を邪魔しないよう手短な連絡から始めましょう。 重要な質問だけにするのは関係を構築するのにベストな方法です。 ただし、くれぐれもGoogleで簡単に調べられる質問をしないように。 こういった質問をする人は「私は平気で迷惑を掛ける無能な人です」と伝えていると思ってください。 先輩への質問は、ゲームのパワーアップアイテムの使用と同じように、無駄遣いせずに、ここぞと言うときだけにしていきましょう。
4. 先輩に望まれる距離感でついていく
知り合って直ぐに先輩というキーワードは出さないほうが良いです。 これは取引とは違うので、この件について時間を掛けても問題ありません。 ただ、あなた自身がその方と関係を続けていこうとする姿勢が必要になります。 この件について、先輩に対して頼み事をしているのはあなただからです。
ベストセラー作家のライアン・ホリデーは、同じ作家のロバート・グリーンを始め、多くのメンターから恩恵を受けてきました。 ホリデーは次のように語っています。
メンターから忘れないようにすること。忙しい人に覚えてもらうのは至難の業だということを忘れないように。そこで心がかけるべき事は、常に関係を保ち、途切れさせないようにすることです。「印象に残る」がわずらわしくないと言う微妙な間柄でメールを送ったり質問したりする。何かを復活させるより、途絶えさせないようにする方が簡単です。更新が途絶えないように努力するのは先輩ではなくあくまでもあなたです。
嫌がられない範囲でメンターとの関係を維持するには、あなたは先輩の助言を実行し、成果を得て、状況改善したことを常に報告していきましょう。 先輩はこれを望んでいます。
もし先輩が相談に乗ってくれたら次のように返しましょう。
「私は指示された宿題に取り組みました。 そして次のステップは、(次にやろうと考えている内容)ではないかと考えました。 ぜひとも先生のご教示を賜りたいと思います。 (綿密に考えていた戦略A)と(綿密に考えた戦略B)のどちらがいいと思われますか?」
このようなやり取りが会話として行き来する交流になることが望ましいですよね。
5. 先輩に誇らしい気持ちになってもらう
どんな指導者も、「自分が指導したことが、結局、時間の無駄だったな」とは感じたくはありません。 これはお金をもらっていようがもらってなかろうが、同じです。 結局のところ、先輩とあなたの目的は一致しているんです。 それはあなたを優れた起業家にすることです。 プラス、同時に先輩を輝かすことです。
卓越した人々に関する研究で知られる心理学教授のディーン・キース・シモントン [Dean Simonton] によれば、偉大な師として見られる事はそれ自体が周りに感銘を与える。ではこの人が偉大な指導者とみられる判断基準は何か? それはもちろん弟子の成功ということです。
経験豊富な者には先輩が必要ないか?
「自分を改善・向上してくれる者」を求める人は、どこまでも成長できます。
些細なミスを事細かに指摘されるのを謙虚に受け止めた結果、どんな成果が得られるだろうか? 私たちはどこまでも精度を上げられます。
参考事例として、プロアスリートを思い浮かべてください。 例えば、羽生結弦選手、大坂なおみ選手。 またサッカーチーム、野球チーム。 なぜ必ずコーチが付いているのでしょうか? しかも1人ではなく多数の専門家を雇っています。
まとめ
2. 先輩について徹底的に調べる
3. 先輩の時間を浪費しない
4. 先輩に望まれる距離感でついていく
5. 先輩に誇らしい気持ちになってもらう
最後に
先輩に本気でついていくほど、生涯の仲間にもなれる。 これは本当に素晴らしいことだと思っている。 しかもそれだけでなく、自分が成長した分だけ、今度は自分が先輩にしてもらったことを次の世代に提供することができます。 ちなみに若い人を育成・指導していることは、健康や収入に比べて、幸福感を4倍も予測させるという。しかも、教える立場になっても、結局実際のところは気付かされることだらけ、学べることだらけです。 このような先輩と後輩の成長による好循環を、組織を飛び出した起業家の世界でも再現していくと、もっと良い世の中になると確信しております。
2. 先輩について徹底的に調べる
3. 先輩の時間を浪費しない
4. 先輩に望まれる距離感でついていく
5. 先輩に誇らしい気持ちになってもらう