孫子の兵法を現代ビジネスで活用するための「国際統合フレームワーク」

こんにちは、高校時代は滑舌が悪くて「『サ行』と『タ行』が言えない」とバカにされていた井畑です。

 

みなさん、孫子の兵法って知っていますか?

敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。

のアレです。

 

2500年位前に書かれた本なのですが、Softbankの孫正義会長や、マイクロソフトのビル・ゲイツなんかも愛読している超優秀なビジネス書です。

 

今回の記事では、先程例に出した孫子の兵法で一番有名な一節の内容を解説し、さらにその思考を現代のビジネスで上手く活用するための「国際統合フレームワーク」の考え方をご紹介します。

※ち!な!み!に!

「孫子の兵法」の「孫子」とは、「本の名前」です!「孫子」を書いた人は「孫武」という人だと言われています。僕もずっと「孫子」さんの書いた兵法書だと思っていました。

彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず。

先程の例では「敵を知り」と書きましたが、「彼を知り」の方が正しい言い方みたいです。

この「彼」という言葉は「目の前の敵」だけではなく、「自分の目標達成に向けて障害となる、もしくは影響を与える全てのもの」という意味になります。

では、「彼を知り」「己を知る」ことで「百戦しても大丈夫」とのことですが、実際に彼と己の「何を」知ればいいのでしょうか?また、「百戦しても大丈夫」とは具体的にどんな状態なのでしょうか?

何を知るのか?

孫子の兵法で言う「知る」とは具体的に何を知ればいいのか?

当然、「目標達成をするために重要となる要素」についてです。

「孫子」は「兵法書」なので、「戦争に勝つための要素」が「五事」としてまとめられています。「五事」とは「検討すべき5つの基本要素」のことです。

この五事の切り口に基づいて彼と己をそれぞれ分析するんですね。

この五事の発想は戦争のためのものなのですが、現代ビジネスでも大いに役立つのでご紹介します。

五事

五事では戦争の基本要素を「道」「天」「地」「将」「法」の5つの切り口でまとめています。

【道】部下や国民と、指示を出す人間の気持ちを一心同体にするために必要な「理念」のこと。

【天】昼夜などの時間、晴れ雨などの天気、暑い寒いなどの気候等、人間には制御不可能な、自然の影響のこと。

【地】地形の厳しさや地域の広さ、その地域特有の地理的条件などの、部隊を物理的に移動させるために検討すべき要因のこと。

【将】戦略策定能力や周囲からの信頼、威厳などの、将軍の人間性(器量)のこと。

【法】軍の編成や役割分担、必要物資の確保等の、インフラ整備のこと。

 

百選して危うからずとは?

では、「百戦して危うからず」とはどんな意味なのでしょうか?

例えば、先程の五事に基づいて、相手と自分を分析したとします。

そのときに、「よ〜し、自分達の国に比べて相手の国はとても強い理念で結びついているぞ。しかも高台に城があるからこちらの城攻めはすごくやりづらい。さらには相手の将軍は超優秀で、インフラ整備も整っている。全部自分たちの国より優秀だ!でも大丈夫!!相手のことも自分のことも十分に知っているから、なんとか策を講じて勝てるっしょ♪」みたいな発想をしたらやばいですよね。

こういう発想をする上司のもとで、ブラックな企業は醸成されていくんですね。

ここでいう「百戦して危うからず。」とは、「勝てない戦はしないので、百戦する機会があっても負けることはない。」という意味です。

つまり、戦の勝敗を分ける主な要因を事前に検討し、負けの色が強ければ始めからその戦いを仕掛けないって戦法ですね。

要するに市場分析

つまり、孫子で書かれているのはこういうことです。

戦争の結果を左右する、重要度の高い要素について、敵と自分について分析を行い、勝ち目があるかどうかを事前に分析し、もし負けそうならその戦からは撤退。

これって、現代のビジネスで言うところの「市場分析」ですよね。孫子の兵法の何がすごいかって、戦争に関しての市場分析を行う際に「一番効果的な切り口」を提供していたんですね。

切り口が効果的だから、返ってくる結果も効果的なものになります。

 

だから、僕たちもビジネスで市場分析を行う際、「どの切り口で分析するか?」という点がめちゃめちゃ重要になってきます。

ここでやっと本題。今回はこの市場分析の切り口について、現代の「五事」になりうる「国際統合フレームワーク」の「リソース分析」の要素をご紹介します。

現代の五事「国際統合フレームワーク」

国際統合フレームワークって、言うのは、国際統合報告評議会っていうところが作ったフレームワーク(考え方の枠組み)です。

国際統合報告評議会(IIRC)は、規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家及び NGO により 構成される国際的な連合組織である。我々は、企業報告の次なる発展は、価値創造についてのコミュ ニケーションにあると考える。

国際<IR>フレームワークは、当該要請に応え、将来に向けた基盤を築くことを目的として開発された。

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

すっっっごく簡単に説明すると、「自分の会社が国際社会で持続的に発展していくことを投資家さんに納得してもらえるよう、根拠が分かりやすい企業分析と開示の方法を作りましたよ」って趣旨のフレームワークです。

 

こんな冊子になってます。

このフレームワークでは自社の資本を6つの切り口で分析するのですが、その切り口が非常に優秀。大きな会社でも個人事業でも関係なくきちんと市場分析が行える切り口です。

6つの資本の切り方

国際統合フレームワークでは、会社が価値創造を行うための資本を「財務資本」「製造資本」「知的資本」「人的資本」「社会・関係資本」「自然資本」の6つの切り口で分類しています。

財務資本

 組織が製品を生産し、サービスを提供する際に利用可能な資金 。

 借入、株式、寄付などの資金調達によって獲得される、又は事業活動もしくは投資によって生み出された資金。

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

まあ、要するにお金のことですね。ここで重要なのが、「手持ちの現金や資産」だけでなく「借り入れや投資によって獲得できる資金」も考慮に入れましょうという点です。企業の場合は当然の発想ですが、個人事業家や起業家さんは忘れがちなポイント。

製造資本

製品の生産又はサービス提供に当たって組織が利用できる製造物(自然物とは区別される。)、例えば、

・建物

・設備インフラ(道路、港湾、橋梁、廃棄物及 び水処理工場など)

製造資本は一般に他の組織によって創造されるが、報告組織が販売目的で 製造する場合や自ら使用するために保有する資産も含む。

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

モノを作っている会社さんにはイメージがしやすいと思いますが、サービス業の方たちは意外と見落としがちかもしれません。

例えばサービスを提供するために必要な「会場」や、自分がサービスを考えるときに使う「パソコン」なんかもこれに入ります。動画を編集するためには「動画編集ソフト」が必要だと考えるとわかりますかね?

整体師さんなんかだと、同じ技術を持っているなら、「無料できれいな会場を使える人」と、「有料であまりきれいじゃない会場を使える人」のどちらが有利かって考えてみるのに使えますね。

知的資本

組織的な、知識ベースの無形資産

 ・特許、著作権、ソフトウェア、権利及びライセンスなどの知的財産権

 ・暗黙知、システム、手順及びプロトコルなどの「組織資本」

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

「特許」なんかや「お客様と接する時のワンポイント」のような「無形資産」って言われるものです。 他にも「モチベーションを保つために毎日これやってます」とか「一日の最初にこれをやると集中力が長続きします」のようなことも知的資本と言えますね。

人的資本

人々の能力、経験及びイノベ ーションへの意欲、例えば、

  ・組織ガバナンス・フレームワーク、リスク管理アプローチ及び倫理的価値 への同調と支持

 ・組織の戦略を理解し、開発し、実践する能力

 ・プロセス、商品及びサービスを改善するために必要なロイヤリティ及び意欲であり、先導し、管理し、協調するための能力を含む。

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

他にも「仲間のやる気を引き出せる」みたいな要素も人的資本です。「人こそ宝」ってやつですね。

見落としがちですが、こういう目に見えない部分の資本の差は大きな影響を及ぼす可能性があります。

社会・関係資本

個々のコミュニティ、 ステークホルダー・グループ、その他のネ ットワーク間又はそれら内部の機関や関 係、及び個別的・集合的幸福を高めるため に情報を共有する能力。社会・関係資本には次を含む。

・ 共有された規範、共通の価値や行動

・  主要なステークホルダーとの関係性、及び組織が外部のステークホルダーとともに構築し、保持に努める信頼及び対話の意思

・  組織が構築したブランド及び評判に関連する無形資産

・  組織が事業を営むことについての社会的許諾(ソーシャル・ライセンス)

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

自分の組織がどんな人や組織と協力して価値提供を行えますか?っていう切り口ですね。

自然資本

組織の過去、現在、将来の成 功の基礎となる物・サービスを提供する全ての再生可能及び再生不可能な環境資源及びプロセス。自然資本には次を含む。

・空気、水、土地、鉱物及び森林 

・生物多様性、生態系の健全性

国際統合フレームワーク日本語訳より抜粋

「富士山のおいしい水で作っています」みたいな商品にとってはもちろん重要なのですが、例えば「霞ヶ浦の周囲をサイクリング」のようなサービスには「霞ヶ浦」という自然資本が欠かせません。

こういう風に、自分の周囲の環境によって同業他社との差別化が行える場合があるので、自然も立派な資本なんです。

 

国際統合フレームワークで彼と己を知る

いかがですか?国際統合フレームワークの資本の考え方、馴染みのない部分が多かったと思います。ですが、どれも納得がいったはず。

馴染みが無いけど納得はした、つまり「見落とし」になっていた部分なんですね。

国際統合フレームワークの資本の観点で、自分の競合になりそうな他社と自社を分析すると、自社の立ち位置や差別化要因がくっきりしてきます

しっかりと分析を行った上で「無謀な負け戦からは逃げる」ようにすると「百戦して危うからず」を達成出来ますね!

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