どうもこんにちは!
起業茶屋®主催で、阿見町商工会 会員(サービス業部会 副部会長)の 筧田 聡 です。
従業員のいない一人社長は、2026年10月1日に始まったカスハラ対策の義務化で、守られる側に入っていません。それなのに、取引先や客として他社の従業員に接すれば、カスハラをする側にはなり得ます。
根拠は、改正労働施策総合推進法の第33条・第34条と、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)です。守られないのに、加害側にはなれる。この非対称を知っておくと、自分の守り方と、取引先への振る舞い方が決まります。
守られない|法律が守るのは「雇われて働く人」
義務を負うのは、人を雇っている事業主です。守る相手は「その雇用する労働者」(第33条第1項)。パート・アルバイトや契約社員も含まれます。
従業員のいない一人社長には、守るべき相手がいません。同時に、自分の店で客から受けるカスハラから一人社長を守る義務を負う人も、この法律にはいません。
指針が手を伸ばしているのは、他社の職場で働く個人事業主などまでです。その職場の事業主に、客の言動から守る方針を併せて示すことを「望ましい」としています。
例外が一つあります。仕事をくれる発注者の側からのハラスメントです。こちらはフリーランス法(2024年11月施行)で、発注者の側に相談体制などを整える義務があり、従業員のいない個人事業主や一人社長の法人も守られる側に入ります。
お客からのカスハラに備える仕組みは、一人社長が自分で作るしかありません。
1人でも雇えば義務|罰金はない、勧告に従わなければ公表
パートを1人でも雇えば、10月1日から次の5つが義務です。
- カスハラには毅然と対応し、働く人を守る方針を決めて、知らせる
- 相談窓口を決めて、知らせる
- 起きたら事実を確かめ、被害を受けた人に配慮し、再発を防ぐ
- 特に悪質なものへの対処方針を決め、対処できる体制を整える
- 相談した人のプライバシーを守り、相談を理由に不利益な扱いをしない
守らなくても、罰金のような罰則はありません。ただし、国から助言・指導・勧告を受けることがあり、勧告に従わなければ、その旨を公表されることがあります(第42条)。
だから線は先に引く|一人社長には「店長を呼んできます」がない
従業員のいる店なら、困ったときは「責任者を呼びます」と言えます。指針も、対処の例の最初に、責任者へすぐ報告して指示を仰ぐことを挙げています。
一人社長には、それがありません。その場で判断するのも、決めた線を守るのも、自分一人です。だから線は、客の前ではなく、開店前に引いておく。指針がお店に示している対処の例は、そのまま自分を守る手順に使えると私は考えています。
- 記録を残す(やり取りの録音・録画は、個人情報保護法などを守ったうえで)
- 時間で区切る(十分に説明しても要求が繰り返されるなら、一定の時間で退店を求める・電話を切る。時間の目安は紙に書いておく)
- 犯罪に当たり得る言動は警察へ、法的な手続きは弁護士へ
線を引くときの注意が1つあります。障害のある方への合理的配慮の提供は、2024年4月1日から事業者の義務です。この「事業者」には個人事業主も入ります。指針も、障害のある方が社会的障壁を取り除くよう求めることはカスハラに当たらない、と念を押しています。配慮の申し出を、線を越えた言動として扱わないことです。
加害側にはなれる|発注書を出す側に回った瞬間
指針の「顧客等」には、取引の相手方も入ります。例に挙がっているのは「取引先の担当者」。職場には、取引先の事務所や、打合せの飲食店も含まれます。
外注先や仕入れ先の担当者に、著しい値引きや無理な納期を迫り続ける。長い電話で離さない。相手の会社から見れば、指針の例に重なります。
法律は、事業主(法人なら役員)自らにも、他社で働く人への言動に注意を払うよう求めています(第34条第3項)。指針は、行為者が他社の役員である場合に、被害を受けた側の会社が、その会社へ事実確認や再発防止への協力を求めることも想定しています。
発注書を出す側に回った瞬間、あなたも「顧客等」です。
迷ったら|茨城労働局 雇用環境・均等室
カスハラ対策の義務のことも、フリーランス法のハラスメントのことも、茨城労働局 雇用環境・均等室(電話 029-277-8295)が相談・問い合わせの窓口です。
店頭で何がアウトになるのか、客の側から見た線引きは、こちらの記事に表でまとめました。
あなたの店の「ここから先は対応しない」という線、紙に書いてありますか?
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。
起業茶屋®の筧田がお送りしました。
参考資料
制度・法令
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第33条・第34条・第42条=守る相手・役員自らの注意・勧告と公表)
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号)」(顧客等に取引の相手方・対処の例・個人事業主等への望ましい取組・障害のある方の申し出)
- 厚生労働省 リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(施行日・5つの措置)
- 茨城労働局「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(特定受託事業者の定義・第14条・相談先)
- 内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省 フリーランス・事業者間取引適正化等法 パンフレット 令和7年4月(第14条のハラスメント対策)
- 内閣府 チラシ「障害者差別解消法が改正に 事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました」(2024年4月1日施行)
- 愛知県「障害を理由とする差別の解消の推進について」(「事業者」に個人事業主も入る)
- 茨城労働局「ハラスメント対策 特設ページ」(相談・問い合わせ先)
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