どうもこんにちは!
起業茶屋®主催の 筧田 聡 です。
起業茶屋®の自己紹介には、30秒の区切りがあります。10年続けるうちに、なぜ30秒なのか、その理由のほうが変わってきました。今日はその話です。
この記事のポイント(ここだけ持ち帰れば足ります)
メモにそのまま貼れるように、考え方を言葉にしておきます。
自己紹介は、次の質問をもらうためにある。
30秒で「何屋さん」か言えれば、話は相手のほうから続く。
長い自己紹介に、価値はない。
人の時間を奪うことは、その人の寿命を奪うこと。
面白い話は切らない。切るのは説明だけ。
名刺は、覚えてもらうまでの武器。
ネット上に何もない人は「いない人」。
最初は90秒だった|長い自己紹介に、価値はない
2016年9月に始めたころ、自己紹介に時間の区切りはありませんでした。集まった人から順に、ひと回りするだけです。
区切りを入れたのは、4回目か5回目のころです。4回目の記録を読み返すと、次回の宿題として「90秒で自己アピール」が出ています。いきなり30秒は難しいので、まずは90秒から。そこから20秒ずつ縮めて、最後は30秒にする計画でした。
理由は単純で、長い自己紹介に価値はないからです。だから、やめようという話になりました。ここで言う長い自己紹介とは、頼まれていない説明が続くことです。話が面白いかどうかは別の話で、あとで書きます。
30秒になったのは、3年目くらいだったと記憶しています。記録で確かめられるのは2020年のオンライン版で、そのころにはもう「恒例の30秒PR」と書いていました(当時の開催レポ)。
今年6月の回では、冒頭でこう伝えました。「30秒を超えた方は、自動的に嫌われる設定になっていますので」。
冗談です。笑ってもらって構いません。ただ、笑えるのは、みんな薄々気づいているからです。人の時間を奪うことは、その人の寿命を奪うこと。私はそう考えています。だから長い自己紹介には、嫌悪感が出るのです。
8人の場で、全員が90秒ずつ話せば12分。30秒なら4分です。差の8分は、その場の全員が少しずつ払っています。
なお、30秒がいちばんいいと示した研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。30秒は、10年の場数から来た決まりです。
30秒で言うのは、「何屋さん」か
では、30秒で何を言うか。10年聞いてきて、はっきりしたことがあります。話が集まるのは、何屋さんかが分かる人です。何屋さんかが分かるとは、相手が次に聞けることが1つ以上あるということです。
「地域を元気にする活動をしています」と言われると、聞いた側はうなずくしかありません。次に何を聞けばいいのかが、分からないからです。
「パン屋です」なら、次の質問がすぐに出ます。どこのお店ですか。何がいちばん売れますか。朝は何時からですか。
心理学にも、近い話があります。初対面の人の顔写真と一緒に名字と職業を覚えてもらう実験で、同じ「ベイカー」という言葉でも、名字のベイカーさんより、職業のパン屋(baker)のほうがよく思い出されました(1987年)。職業には意味があり、ほかの記憶とつながる手がかりが多いからだと説明されています(1990年)。
この研究が示すのは、職業が記憶の手がかりになることまでです。質問が出るかどうかを調べたものではありません。日本語で同じような実験をした研究では、名前と、その人の好きな物などの情報とのあいだに、はっきりした差は出なかったそうです(2014年)。
だから、質問が来るかどうかは、研究ではなく場の感覚で言います。その感覚は10年変わりません。「地域活性化」を看板にして人を集めると、何をしている人なのかが見えない人が集まります。何屋さんか言える人のところには、相手のほうから話が寄ってきます。
面白い話は切らない|切るのは、説明だけ
ここで1つ、白状しておきます。30秒を超えても、面白い話は切りません。いつも続けています。
切っているのは、説明のほうです。説明は、聞く側が頼んでいないことまで話してしまう。話は、聞く側が「それで?」と身を乗り出してくる。同じ30秒でも、中身が違います。
30秒は目安で、時計で機械的に切っているわけではありません。相手が続きを聞きたがっている話は続け、こちらが一方的に足す説明を切っています。
30秒で止めるのは、相手に質問してもらうため
振り返ると、問いそのものが変わっていました。2016年の私は、ブログに「あなたは30秒で、相手の注目と関心を獲得できますか?」と書いています。今の私なら、こう聞きます。30秒で、何屋さんか言えますか。
前の問いは、相手をつかむための問いです。今の問いは、相手に聞いてもらうための問いです。30秒で言い切れば、相手が質問する番が来ます。
調べてみると、同じことを書いている人がいました。アメリカ海軍大学院のピーター・デニングらは、2012年の論考「エレベーターピッチの神話」で、ピッチの出来が成功のカギだという通説を、データは支えていないと書いています。約束を生むのは一方的な伝達ではなく、やり取りのほうだ、と。副題は「売り込む代わりに、聞いて、差し出せ」です。
一方的な伝達を30秒で止めれば、やり取りが始まります。その入口が、相手からの質問です。30秒で止めるのは、相手に質問してもらうためです。
名刺は、覚えてもらうまでの武器
名刺の話もしておきます。
主催の2人、相方と私は、起業茶屋®で名刺を渡していません。名刺交換を禁止しているわけではありません。私たちが渡していないだけです。
渡さない理由は、幹事だからです。幹事は、名刺がなくても忘れられません。必要なら、向こうから連絡が来ます。幹事の席に何が集まるかは、前の記事に書きました。
ただ、これは覚えてもらえる側に回ってからの話です。覚えてもらえるまでは、名刺は武器です。持たずに出かける理由はありません。
名刺に期待する役割を聞いた調査では、「相手の記憶に残るきっかけになる」が46.0%で最多でした(オンデオマ、2025年10月調査)。一方で、名刺を受け取る側の半数は、受け取った名刺をすぐに探して使える形では管理していません(Sansan、2025年2月調査)。
渡す側は、覚えてもらうきっかけとして配っている。受け取る側では、その半分がすぐには取り出せない場所にある。きっかけは作れても、続きは名刺の中にはありません。
続きを渡す場所が、ネット上です。相手は帰り道に、名前で探します。そこに何もなければ、見つかりません。探した側から見れば「いない人」です。相方は昔から、「SNSもやっていない事業者は論外」という考えでした。言い方は強いですが、私も同じ考えです。
30秒で何屋さんか言えて、あとから名前で探せる。この2つがそろって初めて、自己紹介は「その後」につながります。
自己紹介が通じたかどうかは、30秒のあとで分かります。相手から質問が来れば、通じています。来なければ、まだ説明をしていたのかもしれません。
おまけです。この記事は、30秒PRのおよそ20回分の長さです。自己紹介の記事が、いちばん長い自己紹介になりました。
最後に、1つだけ聞かせてください。あなたは、何屋さんですか。
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。
起業茶屋®の筧田がお送りしました。
参考資料
- Peter J. Denning・Nicholas Dew「The Myth of the Elevator Pitch」Communications of the ACM Vol.55 No.6, 2012年(ピッチが成功のカギだという通説をデータは支えない。売り込む代わりに、聞いて、差し出せ)
- K. H. McWeeny ほか「Putting names to faces」British Journal of Psychology Vol.78 No.2, 1987年(同じ語でも、職業のbakerは名字のBakerより思い出されやすい)
- Gillian Cohen「Why is it difficult to put names to faces?」British Journal of Psychology Vol.81 No.3, 1990年(名前が思い出しにくいのは、意味を持たないから)
- 上田卓司・安田孝・椎名乾平「Baker-bakerパラドックスの不成立について」日本認知心理学会 第12回大会 発表論文集, 2014年(日本語では、名前と属性の記憶に顕著な差が出なかった)
- MarkeZine「名刺に期待する役割、最多は『相手の記憶に残るきっかけ』」(オンデオマ「名刺の利用実態と求められる役割・印象・効果」に関する調査・2025年10月22〜23日・会社員と経営者1,011人)
- MarkeZine「買い手の半数が受け取った名刺を活用できる状態で管理していない」(Sansan「名刺交換後の営業・購買活動の実態調査」・2025年2月21〜25日・買い手622人・売り手650人)
















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